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いわき市に福島原発資料館 [地域興し]

 いわき市を訪れる。いわき市は統計上は人口が減少しているが、福島第一原発の被災地からの避難民が推定2万から3万人いると推測されており、また、福島第一原発の修復事業の拠点となっていることや震災からの復興事業などもあるために、震災前よりは中心市街地などは賑わっている。特に顕著なのが、飲み屋街である。いわき市はそもそも炭鉱が盛んであったこともあり、その人口規模に比して飲み屋が多い。しかし、私も震災前に訪れたことが少なからずあるが、炭鉱も閉じてから随分と時も経ち、往時の繁栄とは比較できないほどの寂れようであった。その飲み屋街が、震災前よりも随分と華やいでいるのだ。金曜日の夜、私が訪れたお洒落なバーは、満席とは言えないまでも相当数の客が入っていた。
 また、いわき市に逃げていた避難民は、補償金として一人当たり月額で10万円の補償金が入る。これらの補償金はいわき市にて消費されるので、いわき市の小売業は結構、潤っているのである。もちろん、この補償金は当座のものであるし、また、原発の修復事業は随分と長期にわたるかもしれないが、それでも現在ほど人手はいらないであろうから、今のうちに将来へのビジョンを再構築することが切実に求められる。
 いわき市は、今回のフクシマ原発事故で奇跡的に放射能があまり降下しなかった。結果、福島市や郡山市に比べて、放射能という観点からは生活できる状態にある。とはいえ、いわき市の漁港のすべてが、漁業を再開できるような状況にはない。口にする食べ物の安全性も、極めて怪しいような状況にある。最悪の事態を免れたことは確かであるし、経済的活況は人々を楽観的な気分にもさせるかもしれない。しかし、現時点での経済的活況は棚からぼた餅的なものであること、根源的な地域産業、特に漁業や農業は致命的なダメージを受けていることを考えると、長期的な雇用確保のためにも今、相当、知恵を絞らないといけないであろう。
 私は、自分が何ができるかも分からないのだが、このいわき市に福島原発事故資料館のようなものをつくれたらと思っているのである。福島原発事故はとんでもないマイナスであったが、そのマイナスをプラスに転換させるようなこととして、何が出来るのかと考えた末、この事故のアーカイブを今のうちに多く集めて、それを後生に伝えるような資料館をいわき市につくることを思いついたのである。福島原発の事故が人類に教えたことは、原発は事故を必然的に起こすということである。原発は機械である。機械は故障する。その機械を管理するのは人間である。人間は誤る。そのような状況で運転されている原発は、ある確率で事故を起こす。そして、その確率は、それまで考えていたよりおそらく随分と高そうであるということだ。それは、どういうことかというと、これからも世界各地で原発事故が起きるということである。そして原発事故が起きた時、有用な情報を蓄積して、検索できる資料館があれば、随分と役立つだけでなく、平時も世界中から観光客を集めるような施設になると思うのである。
 私は大学で留学生を対象とした講義を持っていたりするが、留学生の福島原発への関心はとても高いものがある。日本の学生などとは比べものにならない。彼らの好奇心や興味に応えるような施設がいわき市にあれば、いわき市への観光客は多くなると思うのである。
 なぜ、そのような施設がいわき市に立地するべきなのか。まず、福島原発の立地自治体である双葉町や広野町は当分、人が住めるようにはならない。それと、外国人も関心はあっても、そこまで近くには怖くて行きたいとは思わないと考えられる。そして、いわき市にはホテルを始め、繁華街もあるし、多くの都市機能を備えている。つまり、観光客へのサービスを既存の資源でしっかりと供給できる。いわき市は原発からは近からず遠からずという絶妙なポジションにあり、しかも観光サービスも提供できる、ということで、このような立地には極めて適切であると思うのである。
 ということで、是非とも、これが実現できたらなと思うのである。それは、日本だけでなく人類へも貢献するような施設になるであろうし、このとてつもないマイナスを少しはプラスにすることをいわき市もできるのではないかと勝手ながら考えるのである。

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