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奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅 [書評]

この本は『下流社会』の著者である三浦展の編集者としての傑出した能力が発揮した、奇跡的な本である。まず、阿佐ヶ谷住宅が奇跡の団地であることを見抜いた三浦の慧眼。そして、それが奇跡の団地であることを論理化するうえで、集合住宅研究の若手のホープである大月敏夫を指名する三浦のプロデューサーとしての能力。そして、大月は仲間とともに、この三浦の期待に応える。そして、阿佐ヶ谷住宅が歴史的にも、そして建築デザイン的にも、さらには社会的な側面からも、それがなぜ、奇跡の団地と形容されるようなユニークなものであることが次々と明るみにしていくのである。私も個人的に以前からこの阿佐ヶ谷住宅の素晴らしさには感銘していたのだが、素晴らしさにはそれなりに理由があることが分かり、大変読み応えがあった。特に興味を惹いたのは、「車のいろは空のいろ」の作者であるあまんきみこが阿佐ヶ谷住宅で暮らしていたという事実である。阿佐ヶ谷住宅になぜか、ノスタルジックなものを私は感じたりしたのだが、それは、子供の頃、愛読した松井五郎が運転するタクシーからの車窓が、この阿佐ヶ谷住宅のイメージとだぶっていたからかもしれない、などと思ったりもした。阿佐ヶ谷住宅に興味がある人はもちろんのこと、団地や住宅、または建築史に関心のある方も是非とも読まれることをお勧めしたい。個人的には団地研究の金字塔であると思われる。

私ごとですが、私の本からも引用が為されています。このような立派な本に名前が載っていて、ちょっと嬉しいと感じる小市民的な自分に気づく。


奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅

奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 王国社
  • 発売日: 2010/01
  • メディア: 単行本



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