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若林亜紀『国破れて霞ヶ関あり』 [書評]

「(前略)不景気でも、役所では、それほど無駄遣いがはびこっている。それも、女性連れ海外出張に一回1000万円とか、一日中囲碁ばかりしている天下り役人の人件費が年3000万円とか、実にくだらないことに税金が浪費されている」
「日本には道路、年金、雇用、環境、防衛など、さまざまな問題があるが、すべてに共通するのは、官僚支配による歪みである。これを打破することこそがまず必要だ」
(本文から)

 本書は、厚生労働省の研究所に10年間働いていた著者が、道路行政の無駄、農水省が食料自給率40%といって煽る危機感は出鱈目、環境省はエコ・ブームで天下り先を増やす、自分の所管の研究所の研究内容でも省の都合が悪い調査結果は握り潰す厚生労働省・・・などと霞ヶ関の各省庁の国民無視のやりたい放題、税金の浪費などの実態を暴き出す。そのジャーナリスティックな文章は痛快であるが、内容はめちゃくちゃブルーにさせられるものばかりだ。日本の将来、すなわち自分の将来に対して暗澹たる気分にさせられる。といいつつ個人的には、どれもほとんど新しい情報はなかったのだが、一点、文科省のケースは私的には新鮮だった。それは、ゆとり教育を先導した文科省の役人は師弟を公立小学校ではなく、私立小学校に通わせている、という事実の告発である。確かに、私の知人の霞ヶ関の役人も、子供を小学校から私立に通わせている。しかも、私的にも、敢えていかせなくてもいいんじゃない、というようなレベルの私立だったりする。そんなに公立が嫌いか!っていう感じだ。でも、これって腹立たしい話である。国民には、ゆとり、ゆとりと言っておいて、自分たちは私立って、何これ。税金泥棒という言葉しか浮かんでこない(いや、他の省庁もほとんど税金泥棒だが)。ちなみに、私の長女は完全ゆとり世代の高一なので、本当、将来的にも最も「ゆとりのない」人生を歩ませられそうで可哀想だ。小学校に私立に通わせられなかった父親の財力を恨んでくれ。ちなみに次女も公立だ。でも、自分たちが信じられない教育制度をつくっているのって、自分たちが買わない商品を人に押しつけているのと一緒じゃあないのか。

ということで、いろいろと考えさせられる本書は、全国民必読といいたい気持ちである。ちなみに道路に関しては、拙著『道路整備事業の大罪』により詳しい解説がなされているので、それも併せて読んでいただけると嬉しかったりする。


国破れて霞が関あり―ニッポン崩壊・悪夢のシナリオ

国破れて霞が関あり―ニッポン崩壊・悪夢のシナリオ

  • 作者: 若林 亜紀
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/06
  • メディア: 単行本



道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2009/08/06
  • メディア: 新書



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