『地域・並行通貨の経済学』 [書評]
『水土の経済学』の著者の、通貨論に関する著書。しかし、『水土の経済学』のようなインパクトや、切り口の鋭さは本書にはなく、ただ事例が紹介されている。これらの事例も海外ものや、また過去の琉球、蝦夷地、そして江戸時代の藩札などが中心であり、現在の我が国の地方で展開している地域通貨に関しての報告やその検証などはほとんどない。ということで、地域通貨を研究しようとして本書を手に取った私としては、非常に不満が募る内容であった。海外での事例紹介は、ほとんど室田先生の旅日記のようであり、読んでいて多少、いらつく点もあった。通貨史に関心がある読者であれば、多少、参考になる内容も含まれていると思われるが、地域通貨論を知りたい読者にとっては、あまり有益ではない。