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久繁哲之介『地域再生の罠』 [書評]

地域再生プラナーを称する著者が、なぜ地方が豊かになれないのか、を分析、論じている。著者は多くの地方事例に精通しており、自らの視点から、問題を分析し、それを上から目線であって、市民の声を聞かないことである、との仮説をたてて検証している。特に岐阜や宇都宮がなぜ衰退するのかに関して論じるところは舌鋒鋭く、説得力に富む。

著者は、また土建工学者を強烈に批判している。それは、そこで生活する人々のことを考えずに、机上の成功事例を押しつけるからであると述べているが、そのような自分の意見を主観的に押しつけるのは中小企業診断士やマーケティング・アナリストでも多い。私は、どちらかというと、文系でまちづくりや都市計画に携わろうとしている人(特にエコノミスト)の方が、むしろ、いい加減な現況分析をする傾向があるように感じるので、その点は著者とは意を同じくできない。

しかし、総じて「私益」ではなく「公益」を求めることが町を豊かにする、との考えには納得する。文系でまちづくりや都市計画を論じている著書の中では、なかなか信頼できる部類のものだと思う。

地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)

地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか? (ちくま新書)

  • 作者: 久繁 哲之介
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/07/07
  • メディア: 新書



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