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古都奈良で駐車場を考える [都市デザイン]

世界遺産古都の奈良。その歴史が紡いできた美しい街並みは、まさに人類の資産であり、日本人のアイデンティティを確認させてくれる素晴らしい財産だ。しかし、その古都が侵食されている。古い町屋が残る奈良町でも、10年前と現在では大きくその風景が変貌している。街並みにそぐわない建物が立地したりしているからだが、何よりも奈良町の伝統的な街並みを破壊しているのは駐車場である。駐車場は無意味な空間を町屋に創出させ、街並みの連続性を遮断させるだけではない。町屋の街並みは建物がぎっしり建っていることで、妻側はみられずプライヴァシーが守られる。この空間的な秩序を駐車場は壊すのである。そのヴォイド的な空間は醜いだけでなく、町屋の美しく飾った表向きのファサードではない、プライベートな空間を人々に晒すことになる。

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(奈良町で空間を分断する駐車場)

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(駐車場は妻側のプライベートな空間を公共に晒す)

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(この駐車場空間は間抜けなだけでなく醜い)

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(自動車への執着が歴史的街並みを緩慢に破壊していく)

駐車場をつくらせないようにすることは、地区計画、建築協定でおそらく可能な筈である。しかし、この奈良町で伝統的建築を保全しようと活動している人にそれを問うと、そのような協定を結ぶことに対して住民は消極的なそうである。というか、結びたがらない。その結果、駐車場は増えていく。現在でも、駐車場の醜さは耐え難いものに近いが、これからさらにどんどんと増えていったら、この戦災をも免れた1200年もの歴史の積み重ねのある美しい街並みが消えていってしまうであろう。それで果たしていいのであろうか。それは、住民の立場からいうと難しいところもあるかもしれないが、日本人としての貴重な資産であり、また将来の世代への遺産でもある。このようなものをしっかりと保全するために公共投資をすることは、道路に公共投資をすることに比べて、はるかに日本人にとって有り難いものであると思う。というか、こういう資産を守ることこそ保守系の政治家がやらなくてはいけない筈なのに、日本の保守系の政治家はむしろ一生懸命、道路を整備して日本人の心の故郷とでもいうべき美しい景観を破壊している。とても不思議である。

タグ:奈良 駐車場
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