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崎山比早子さんの講演の抜粋 [原発問題]

元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子の講演議事録を読む。第二東京弁護士会環境保全委員会が主催したもので、講演日は3月28日である。内容的に私が関心を惹いたところだけ抜粋して紹介したい。

「日本は世界で一番医療被ばくが多いんです。年間約1万人ぐらいが医療被ばくによって癌になるんじゃないかという論文が出されたのがもう7年前です。私たちは、医療被ばくが非常に問題だと言ってきているんですけれども,厚生労働省は何の手も打っていません。それでも、医療被ばくの場合は自分に選択権があるわけです。医療被ばくの正当化というのは,被ばくしてリスクはあるけれども,それによって病気を見付けたり治療方針を決められたりというメリットが患者さんにあるわけです。そういうメリットとデメリットを天秤に掛けて,メリットが多いなと,お医者さんが判断した場合に,あなたは検査を受けなさいということを言ってオーダーするわけです。ところが,原発の放射性物質を私たちが毎日浴びさせられているのは,まるっきり選択権がない。癌になるのは年輩の人です。子供はあまり,もうほとんど,赤ちゃんとかが癌になるということはほとんどないわけです。そういう年齢の区別もなく, 一様に被ばくさせられているという状況と, この医療被ばくと線量が同じですというふうに言って, 心配ありませんというコメントをする人の神経がちょっと分からないという感じがします。」

確かにレントゲンと同じだからそれほど気にするな、と言って、放射能に被曝することをあたかも正当化する意見を言っていることは、政府としてはちょっと酷いですね。

「(DNAの)2本鎖切断が癌になるんだったら, 放射線のどのぐらいの量でその2本鎖切断が起こるのかなということが問題となります。これは長い間, 低線量の場合は2本鎖切断は起きないと言われていたんですが,そうではないことを2003年に発表された論文で2人の研究者が,実験して証明しました。彼らが使った一番少ない線量は1.3ミリシーベルトです。(中略)彼らは、1.3ミリシーベルトで,2本鎖切断が起こることを証明しました。(中略)このように2本鎖切断が線量に比例して直線的に増えることが,後でお話しする放射線の線量と,それから発癌の関係にしきい値がない。放射線に安全量は存在しないということの証明だと私は思います。」

この放射線と発癌との関係性に閾値がない、というのは理解していましたが、その理由が分かりました。まあ、確率論な訳ですね。ということは放射線は浴びないに越したことはない、ということです。

「放射線のエネルギーというのは非常に大きいものであって,化学結合のエネルギーとはもう比較にならないほど大きい。幾ら少なくても,DNAを傷付ける可能性はあるわけです。その確率は線量が少なければ少ないほど下がりますけれども,DNAを傷付ける機会というのはあるわけです。ですから,DNAが傷付いたときに,正しく治されればそれでいいんですけれども,治されないと変異が起こる。で,変異が起こったときに,それが,変異は元に戻りませんから,その細胞が生きていれば,ずっと体の中に残るということで,放射線のリスクというのは蓄積していくわけです。そういう意味から言うと,自然放射線は私たちはもう避けることはできないんですけれども,それ以外の放射線はできるだけ避けたほうがいい。それは当然なんですね。だから安全ですという安全量は存在しないですから,ここまでは大丈夫ですよというふうに言う基準というのは,社会的とか経済的な基準であって,生物学的な基準ではない。」

「S P E E D I という原子力安全委員会が管理しているシステムがあります。これは風向きとか, ここから放出される放射性物質の量がどの程度, どのぐらい早く広がるかということシミュレートすることができます。こういうことができるシステムを原子力安全委員会は持っていて,年間7億円ぐらいずつずっと使っているんです。これが公表されたのは,国会で質問された後なんです。こういうのは,最初に言いました放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれるのを防ぐためのヨウ素剤をいつ配布するかということに対しても非常にクリティカルな問題です。これによると,30キロ圏内以外でも,100ミリシーベルトに達しているんですよ。これは12日間の総計,蓄積です。ここにいた人たちが,SPEEDIの結果が公表されていませんでしたから,もしこのSPEEDIの計算というかシミュレーションで,こういうところが汚染されるということが分かったら,その前にヨウ素剤を飲ませておくべきだったんです。だけれども,これが発表されたのが,もうこれは汚染された後ですから,ヨウ素剤を備蓄していたとしても,もうそれは何もならなかったということです。本当に何ていうか,国民の健康というものをちゃんと考えたら,こういう情報をいち早く知らせて避難させるなり何なり,手を打ってもらいたいと本当に思います。」

SPPEDIに関しては、本当、なぜ情報公開できなかったのか。この情報公開をしないという判断をする行政の体質を理解するうえでの一つのヒントを与えてくれます。一応、事故が起きた時のシミュレーションをするということで、予算を取ったのですが、その目的は建前で、実態としては、ただ予算が欲しかっただけだったのではないのでしょうか。それ以外に、情報を公開しない理由が見つかりません。

「どうしても安全を考えたら,やっぱり日本を離れるというのは最善の策です。それはしようがない。こんな事態になったということが・・・そういうことでしょう。」

そういうことなのか・・・。

彼女の講演の議事録は下記で読むことが出来ます。
http://niben.jp/or/kankyo/houkoku/h_20110328.pdf

タグ:崎山比早子
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