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ローカル線に事業採算性を要求する世界でも極めて稀な理不尽 [サステイナブルな問題]

12月4日、東北新幹線が新青森まで開業した。新幹線が通ると、地域は大きな地殻変動に見舞われる。一つは、航空機の利用者が大きく減るということだ。新幹線の速度だと700キロメートル程度は、航空機に対して優位性を持つことが出来る。東京からだと、福岡までなら航空機が圧倒的に有利になるが、広島あたりだと新幹線が拮抗することができる。これは、もちろん広島空港が亀井さんのおかげで、恐ろしく不便なところに位置していることもある。さて、もう一つの地殻変動は、新幹線を理由に赤字在来線からJRが経営の手を引くことである。青森市の青い森鉄道、上田市のしなの鉄道、八代市の肥薩おれんじ鉄道などがある。これらは当然、赤字である。このような地方部の鉄道が赤字になるのは、世界的な常識である。それにも関わらず、日本は採算性をこれらの事業に求めるのである。これは、うさぎにトイレを躾けるようなもので、100%不可能とはいえないかもしれないが、すこぶる大変であり、通常はできなくても許すべきものである。トイレができなくてもうさぎは捨てられない訳で、それはうさぎを飼いたいとペット主が思うなら許すべきことであろう。同様に、地方部で鉄道を持つということは、それなりに公共事業体が赤字分を補填すべきことで、これはヨーロッパのすべての国が実施しているし、アメリカでは運営費を賄うために消費税を値上げしている(最近では運営費の赤字分を消費税を上げると住民投票で決めた都市のみが、LRTの建設補助金を連邦政府から受けられるようになっている)。鉄道は公共交通である。自動車よりも遙かに公共性が高い乗り物であり、行政がその赤字分を補填するなどで対応しないと運営することは不可能だ。日本はまさに「奇跡的」に鉄道事業が民営で黒字化を果たしたことができたので、今でも鉄道事業の事業採算性を求めるが、これだけモータリゼーションが進んだ地域で、なおかつ、世界でも最高級の道路ネットワークが整備されてしまった現在では、鉄道事業が採算を取ることは不可能である。それは、奇跡のうえに奇跡を重ねなくてはならない。というか、地方部において必要なのは鉄道などの公共交通の足である。それを、勝手に自動車こそが移動の主役ということにして、税金をじゃぶじゃぶと道路整備に偏在させて使う政策を推進したことで、地方は本当にガタガタの状況になっている。これで、石油が高騰化したら、さらに地方部の生活は潰されていく。

鉄道をはじめとした公共交通は、その地域の空間構造、生活スタイルにも影響を与えることができる。その公共交通を骨抜きにした政策をしたつけを被るのは地方である。地方の人々も、自動車に過度に依存した状況が将来、本当に悲惨な未来を招くことをしっかりと認識するといいと思われる。そのためにも公共交通をしっかりと確保していくことが、まさに生命線であり、それを事業採算性という世界でもあり得ない理不尽な理由で、その存続を脅かしてはならないと強く思う。

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