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ジェネシスの『アバカブ』とジェネシスのロック殿堂入りの関係性 [ロック音楽]

ジェネシス11枚目のスタジオ・アルバム『アバカブ』は、少なくとも個人的にはジェネシス史上最高傑作ともいえる『デューク』に次いで発表されたアルバム。本来的にはとてつもない期待をもってよい筈だったのだが、当時は期待と不安が入り交じった複雑な気持ちでレコードに針を落とした。というのは、『デューク』が出た後、フィル・コリンズが初のソロ作品を発表していたからである。それまで、他のプログレ・バンドの追随を許さぬ超絶ドラムそしてピーター・ガブリエルがいなくなった後はボーカルとフロント・マンを担っていたとはいえ、作曲面ではほとんど貢献してこなかったコリンズであったが離婚そして『デューク』の制作過程において、本人も気づかなかったソング・ライターとしての能力が開花する。そして、それまで蓄積されていたものが一挙に顕在化する。ビートルズ解散後のジョージ・ハリソンのようなものか。このソロ・デビュー・アルバムの『フェース・ヴァリュー』はそんなに悪いものではなかったのだが、どこかポップス調で軽くて、ジェネシスの重厚さとはちょっと違っていて、多少抵抗を覚えた。ということで、『アバカブ』がその影響を受けないといいのだが、という不安を当時は抱いていたのである。

さて、それで実際、聴いてみると『デューク』と『フェース・ヴァリュー』を合わせたような内容のものとなっていて、期待に応えてくれた部分と不安が現実化してしまった部分とが共存するアルバムになっていた。例えば『ミー・アンド・サラ・ジェーン』や『ドド』はまさに『デューク』路線で、トニー・バンクス節が炸裂して個人的には非常に好きな曲である。しかし、一方で『ノー・リプライ・アット・オール』はメロディこそ素晴らしいが、アース・ウィンド・エンド・ファイヤのホーン・セクションが入ったりして、それまでのジェネシスとは全く異なるタイプの曲であった。そして、だめ押しが『フー・ダニット』。これは、それまでの重厚なるアンサンブルのジェネシスの曲とはまったく一線を画す曲で、当時は大いに絶望した。ということで、『アバカブ』に対しては非常に複雑な気持ちを持っている。そして、それ以降、ジェネシスはむしろ『ノー・リプライ・アット・オール』、『フー・ダニット』路線を突き進んでいき、それでも素晴らしい曲を幾つかは提供してくれるのだが、トニー・バンクス作詞・作曲の『ミー・アンド・サラ・ジェーン』のような繊細でいてドラマティックで、つづれ織りのように複雑な音楽を創ることはなくなってしまった。しかし、そのことで一般的な人気を博すことになり、今年にはロックン・ロール・ホール・オブ・フェームに殿堂入りする。ということで、イエス、キング・クリムゾン、ELPも成し遂げたことがない快挙?(イギリスのプログレ系だとピンク・フロイドのみが殿堂入りをしている)を達成したことは、ジェネシスのメンバーにとってはよかったのかもしれない。

ところで、この殿堂入りのイベントでのフィッシュのスピーチと演奏が非常にいい。トレイ・アネステシオはジェネシスのファンでなければ決して言えない素晴らしい紹介をしている。関心がある人は下記をチェックしてください。ジェネシス・ファンであれば感動すると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=MHV1TAwujds&feature=related


Abacab

Abacab

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Atlantic / Wea
  • 発売日: 1994/11/29
  • メディア: CD



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