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『ブレックファスト・イン・アメリカ』 [ロック音楽]

もう35年くらいロック音楽を聴いているからだが、その中で聴いた瞬間に衝撃を受けたアルバムが幾つかある。ビートルズの『アビー・ロード』や『マジカル・ミステリー・ツアー』、キング・クリムゾンの『クリムゾンキングの宮殿』、ジェネシスの『眩惑のブロードウェイ』、『デューク』、ディープ・パープルの『マシンヘッド』ラッシュの『パーマネント・ウェイブス』、オアシスの『デフェネットリー・メイビー』、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』、イエスの『こわれもの』、レッド・ツェッペリンの『プレゼンス』などがそうだが、このスーパートランプの『ブレックファスト・イン・アメリカ』もまさにそういうアルバムの一つである。その衝撃は結構、すさまじく、初めて聴いた場所まで覚えている。それは15歳の時、塾で友達となった他の中学に通っていた小沼君の部屋で聴いたのであった。

1曲目の『ゴーン・ハリウッド』を聴いただけで、なんだ、このメロディーとアレンジの素晴らしさはと、呆然とするような感動を覚えた。そして、続く『ロジカル・ソングス』、『グッドバイ・ストレンジャー』のメロディーの素晴らしさと綿密なる演奏。さらに『ブレックファスト・イン・アメリカ』の濃密なる存在感とお洒落なセンス。こんな音楽があるんだと腰を抜かすような感動を覚えたものである。他のロック・バンドがセックス・ドラッグ・ロックンロール的な軟派なノリを常に持っていたのに対して、当時ガキであった私はスーパートランプに上品さと洗練さ、そして知性を感じたのである。当時、ガールフレンドもいなかった受験生であった私には、その安全印がついたようなバンドの無害さが多分しっくりときたのであろう。しかし、無害ではあったかもしれないが、そのメロディーは素晴らしく、また歌詞もどこか斜に構えていて、どうせ俺は大したことない、というベックの『ルーザー』の「俺は負け犬だ、俺を殺したらどうだい」にも通じる自虐的な歌詞が、おそらくどこか反体制を志向していた若い自分の感性に強く訴えかけたのかもしれない。この15歳の時に受けた感動は、今、聞き直しても蘇る。というよりかは、中年になって、『テーク・ア・ロング・ウェイ・ホーム』などの歌詞がずっしりとより心に響くところもあるかもしれない。多少、『テーク・ア・ロング・ウェイ・ホーム』と『チャイルド・オブ・ヴィジョン』の間の3曲が牧歌的というか、テンションがそれほど強くはないが、このアルバムの1曲目から4曲目の繋がりは、ビートルズの『アビー・ロード』のB面に勝とも劣らない。初めて、このアルバムを聴いて衝撃を受けてから32年も経つが、今でもその時、受けたのと同じような感動を覚える。素晴らしいアルバムであり、おそらく私の人格形成にも多少、寄与したアルバムなのではないかと勝手に思ったりする。

ブレックファスト・イン・アメリカ

ブレックファスト・イン・アメリカ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルインターナショナル
  • 発売日: 2010/08/04
  • メディア: CD



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