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ニューヨークのブロードウェイが自動車を排除していた! [都市デザイン]

ニューヨークに久しぶりに来ている。マンハッタンに限れば2006年の6月以来だから4年ぶりか。さて、この4年間でマンハッタンに革命的な都市デザイン事業が遂行されていたのである。その事実を、私は今年の1月にデンマークでヤン・ゲール氏からうかがった。それは、このヨーロッパを代表する都市デザイナーが、マンハッタンのブロードウェイから自動車交通を排除するというプロジェクトをコンサルティングしたという話であった。この取材内容は、財団法人ハイライフのインターネットで閲覧することができる。

http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=3689(前編)
http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=3803(後編)

ともかく、私はヤン・ゲールに取材したにも関わらず、ブロードウェイから自動車を排除したという事実も、それをヤン・ゲール氏が指導したということも実は知らなかったのである。何たる恥。というか、こんなことをここで暴露して、もしヤン・ゲール氏が日本語読めたら、二度と取材に応じてくれないのではないかと思う。とはいえ、この歩行者モール化は2009年の5月24日に実験的に開始され、そして恒久化されたのが2010年2月11日であった。さらに現在、ユニオン・スクエア周辺をも歩行者モール化しようとしている。すなわち、知らなかったことの責めは受けなくてはならないだろうが、まだ最近の事業ではある。

ということで、せっかくニューヨークに来られたのだ。早速、このブロードウェイを見にいった。タイムズ・スクエアの辺りは、カフェなどが以前、車道があったところに設置されたりして本当に多くの人で溢れていた。確かにブロードウェイは、ニューヨークを代表する通りであるが、格子状のブロックを斜めに突っ切っているために、これを通れなくしても、交通ネットワーク上はそれほどの弊害はないであろう。随分と思い切ったことを実施したが、このタイムズ・スクエア周辺を見る限りは成功だと思われる。しかし、このブロードウェイが28番街や30番街と交わる周辺は、道路車線を一部残しつつ、自転車専用レーンなどを設けたりしているのだが、どうも賑わいや都市活力に乏しいように感じられた。これは、むしろ自動車交通を少なくしたために失われた活力かもしれないと思ったりもした。また自転車専用レーンが設けられたが、通行していた自転車は少なかったのが印象的であった。これは自転車専用レーンまでもが一方通行指定であり、ネットワークとして使い勝手が悪いのかと勝手に考察したりした。これだけ、利用者が少なく、また幅も広いのであるから両方通行にすべきだろう。そうでなくても、違反していた人も多く見受けられたからである。

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(タイムズ・スクエア周辺はまさに歩行者中心の素晴らしき都市空間が創出されている)

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(車道はカフェへと変換されている)

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(33ストリートと6アベニューの交差点では、33ストリートは通り抜けできないようにしている)

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(6アベニューから北は完全なる歩行者空間となる)

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(自動車が走っていた場所は今ではカフェなどとして利用されている)

大雑把な第一印象だけの感想ではあるが、タイムズ・スクエア周辺の自動車を完全にシャットアウトした空間は人も多く溢れ、素晴らしい都市空間を創出することに成功しているが、自動車の走行車線を削減した部分においては、むしろマイナス面も多いのではないかと察せられた。いっそのこと中途半端に自動車を通すのではなく、完全に歩行者空間(自転車は走行可能)にしてしまった方がいいのではないかと思われる。それでも、歩行者数が少なくて寂しいようであったら、真ん中に街路樹でも置いて、都市公園というか緑道のようにしてもいいであろう。

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(自転車利用が少ないので、自転車専用レーンを歩行者が使っている。これなら、むしろ自転車専用レーンは不要かもしれない)

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(9月の晴天という、まさに絶好の自転車日和なのに自転車は全然走っていない)

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(中途半端な自動車通行の制限は、中途半端に街路から活力を削いでいる印象を受ける)

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(一方通行を無視している自転車乗り)

まあ、ちょっと批判めいたことを書いたが、ニューヨークという大都市でも、都心の公共空間を自動車から歩行者のものへと、その機能をシフトさせようとしていることは示唆するものが大きいと考えられる。人間都市であることの重要性をニューヨークでは理解し始めている。このきっかけはシャロン・ズーキン教授へのヒアリングによると、ニューヨーク市交通局長のジャネット・サディカーン女史の功績によるところが大きいらしい。彼女は2007年の3月にブルームバーグ市長に任命されると、ニューヨーク市の治安の向上、モビリティとサステイナビリティの改善に取り組み、特に2008年4月に公表したサステイナブル・ストリート・プロジェクトによって、ブロードウェイの歩行者プロムナード化(当時は夏季限定)などを提案したのである。サディカーン局長はコペンハーゲンに行ったりして、ストロイエに大いに感銘を受けたらしいとズーキン教授は教えてくれたが、このコペンハーゲン行きは実は、ヤン・ゲール氏への仕事の依頼のためだったのではないかと邪推したりした。

ともかく、ニューヨークのこの試みは、ヨーロッパよりも40年以上遅れてはいるが大いなる前進といえよう。このニューヨーク、そしてシアトルやサンフランシスコといった都市は、アメリカにおいても人間中心の空間を創造しようと試みている。あのアメリカでさえ人間都市への道へ舵を切り始めているのに、相変わらず自動車優先の道路整備に邁進する日本はどうなるのだろうか。最後まで取り残されてしまうのは日本だけなのではないか、という心配を強くする昨今である。

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