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水戸市で開催されたコミケの街づくりにおける効果を聞く [地域興し]

水戸市をゼミ生達と訪問して、水戸市で今年の3月に開催したコミケに関しての話を聞く。私はコミケというイベントが行われていることは知っていたが、その内容に関しては、まったくもって無知であった。したがって、それがどの程度の集客力を有しているかも不明であったので、二日間の開催で33万人も人を集めたことを知って大いに驚いた。

水戸市がコミケを開催する背景には、水戸市の中心市街地の衰退がある。実際、水戸市の中心市街地は相当の勢いで衰退している。駅前の商業ビルでさえテナントが入らず、中心市街地の目抜き通りでさえシャッターを降ろしていたり、空き店舗が多かったりする。県庁所在地であるとはとても思えない。水戸市は人口が縮小している訳ではないので、この中心市街地の衰退の主要因は郊外化が展開したからであると考えられるが、バイパスなどを整備し、大店法を廃止して郊外での商業開発などを可能とした為政者は、このような事態をもたらした罪を自覚すべきであろう。90年代後半の経産省の役人達や、道路行政を推し進めた国交省の役人達が、このような事態をもたらした主犯であろう。当時、あのような施策を推し進めれば、今のような事態になることはアメリカの都市などをしっかりと研究すれば明々白々であった。しかし、実際、その衰退ぶりを目の当たりにすると怒りが湧いてくる。

話を水戸市に戻そう。水戸市に水戸駅ができるのが明治22年。これは、今の常磐線ではなく、水戸と小山とを結ぶものであった。その後、常磐線もでき、また戦後は国道55バイパスが市の南側につくられる。そこにロードショップ型の店舗ができて、昭和60年代くらいに人々が都心から流れ出る。さらに平成に入ると、イオンなども出来る。その結果、都心部に人が集まらないようになる。そして、上述したような中心市街地は閑散としていき、空き店舗が埋まらないような事態になる。

そのような状況をどうにか改善しようと、コミケで町おこしを図ろうと有志が起ち上がる。今回、我々の案内をしてくれたその有志達のリーダーである須藤さんは、NHKのテレビ取材に対して「出来ることは何でもやらなければ、どうにもならない事態にまで来ている」といったような内容を述べていたが、とにかく街に刺激を与えたい、ということでコミケの開催に取り組むことになる。

まずは誘致活動ということで、誘致をするうえで企画書を作成する。ここで、企画書を郵送ではなくて持参する。これは、熱意が通じやすいということや、相手がどのような人なのか、また意見交換ができることなどが期待できたからであるが、結果的にこれが功を奏す。いろいろと主催者側の意見などを聞くことができ、誘致活動をするうえで有利な展開をできることになったからである。そして結果的に誘致を勝ち取る。

さて、NHKでの特集番組なども見せてもらい、その実態を知ったのだが、何しろコミケの集客力の凄さに驚く。そして、そのファンの顧客としての誠実さにも驚く。オタク凄い。しかも、お行儀がよく、マナーを守る。一般的にオタクというと、あまり肯定的なイメージを抱いていなかったが、彼らをターゲットとするコミケ・マーケットは相当、ビジネスとしては優れていることを知る。特に街のイベントとしては、その集客力の高さ、金の使いっぷりのよさから、相当優れた顧客であろう。オタクこそが日本経済の救世主なのではないか、と思うくらいである。いや、今さらこんなことに気づいていると思っているのは私だけだって、既に皆知っていることなのかもしれないが。

人が来ないと街はどうにもならない。どんなに素晴らしい建築物が建っていても、どんなに立派な道路が整備されたとしても、そこに人がいなければ都市は魅力がない。逆にいえば、人さえたくさんいれば、建築が悪かろうが、都市デザインが今ひとつであろうが、どうにかなるかもしれないと思わせる。何しろ人がマチを活性化する。衰退している中心市街地を持つ都市は、この人を呼び込むための施策を展開するべきだ。方法論は大雑把に二つ。一つは中心市街地の魅力を高めること、もう一つは郊外など中心市街地と競合する地区における集客施設をなくしていくこと。後者ができず、前者だけで頑張るのは水戸レベルの都市でもまったく無理であることは、水戸をみれば分かる。人口が100万以下の都市では、中心市街地が必要であると思うのであれば、都市成長管理をしたりして郊外開発規制をしたり、また既存の郊外開発に対しては郊外税などを設定するなどして、徐々に中心市街地に人々を呼び込むようにするべきであろう。また、郊外開発を誘因した大きな要因はモータリゼーションである。モータリゼーションに対しても甘やかさない政策を展開させていくことが求められる。

コミケを実現させた水戸市役所の職員で、水戸市政策研究会の代表の須藤さんは「まちが楽しければ人が来る」と言う。そして、コミケの次に考えているのはLRT。これは電車を走らせたいというよりかは、都市構造を転換したいからである。須藤さん、とても問題点をしっかりと把握されている、と僭越ながら感心した次第である。

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