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絶好調都市ハンブルク [都市デザイン]

ハンブルクは絶好調である。ヨーロッパが不景気なので多少はダメージを受けているが、それでも快調だ。ハンブルクはドイツ最大の港であるが、ドイツの港はロッテルダムやアムステルダムである。それではハンブルクはなぜ成長しているのか。それは、ベルリンを始めとした旧東ドイツ、そして東欧諸国の港として機能しているからだ。すなわち、東西ドイツのカーテンが崩れて、メリットを享受したのはベルリンなどではなくハンブルクであったのである。ハンブルクだけでない。東欧諸国の市場が拡大するのとともにカーリングラードなどの港町も成長著しい。落ちこぼれているのは旧東ドイツの随一の港としての位置が喪失したロストックぐらいか。このロストックはハンブルクが使える今となってはまったく意味がなくなっているからだ。

さて、ハンブルクは非常に興味深い都市だ。ドイツらしい都市といえば、まさにドイツらしいのだが、一方でドイツらしくないとも思われる。これは、何をもってしてドイツであるかということが分かりにくいからだろう。建築などはミュンヘンやフライブルク、エアフルトなどよりはるかにデンマークやオランダに近い。これは、アルトナ駅周辺が1世紀も前にはデンマーク領であることを考えれば当然か。オランダのアムステルダムなんかとは随分と似通っているが、違いはアムステルダムはごみだらけなのだが、ハンブルクは綺麗である点だ。さらに、デュッセルドルフやドルトムントなどとも全然、違う。デュッセルドルフはちょっとフランス的な影響が強いのであろう。まあ、印象的に近いのはブレーメンか。地理的に近いから当然のことかもしれないし、港町という点からも似ているのかもしれない。街中で見かける人達も全然、他のドイツの都市と違う。なにしろ黒人が多い。どうもケニアからの人が多いらしい。他にはトルコ系の人が多いが、これはルール地方もそうなのだが、より目立つ印象を受ける。あと、危なそうなドイツ人が多い。パンク系や麻薬をやっているんじゃないかというドイツ人が中央駅の周辺をうろうろとしている。ホームレスも見かける。なぜか、ホームレスなのに綺麗な寝袋に入って携帯で電話をしていた。ホームレスではなく、奥さんに家を追い出されているだけかもしれない。ここらへんの都市景観は港町らしさが全開している。

ハンブルクで凄いなと関心するのは都市計画である。ハンブルクは都市州で周囲に開発余地がないため、郊外化の問題に対処するためにはブラウン・フィールドの開発をするしかない。私などは、思い切ってハンブルクの都市圏をハンブルク州にしてしまえばいいのではないかと思うのだが、流石に合理的なドイツ人でもそれは政治的に受け入れられないであろう。これはもったいないが、まあ次善策として、ウォーターフロントの拡張(インナーハーフェン)とエルベ川にあるヨーロッパ最大の河川島であるヴィルヘルムスブルクを再開発しようとしている。前者は民活中心で、後者はIBA事業としてやっている。療法とも視察したが、驚いたのはインナーハーフェンの都市デザインの秀逸さである。もう、最上級レベルの都市デザインによって新たに創出された都市空間が創造されている。この空間の質の高さは何なのだろうか。まだ完成していないが、コンサート・ホールがまさにランドマークとして機能するように位置づけられており、本当に都市づくりがうまいなと思う。こういうわくわく感を、新東京タワーにはまったく感じられない。どうして、日本人は何をやらしても結構、上手いのに都市デザインに関してはてんでダメなのだろうか。アジア人の中でも韓国人に比して、全然、ダメだ。この点は、日本人を知るうえでも結構、興味深い切り口だと思う。一方で、民活がまったく期待できないヴィルヘルムスブルクはドイツの都市計画の切り札ともいうべきIBA事業として位置づけた。2007年から2013年までの期間に、ハンブルク市は100万ユーロを投入することになる。ベルリンのクロイツブルクからの伝統ともいうべき、マスタープランのない都市戦略を展開する。IBAとは国際建築展と訳されるが、既に「建築」ではないとの指摘をハーフェン大学のシューベルト氏から聞く。それは、むしろ「都市再生のアイデア」のコンペというレベルになっている。ハードよりソフトの提案が求められているのである。とはいえ、何か変化を象徴的に示すうえでは建築の力をまったく過小評価することはできない。さて、このIBA事業は、民活がまったく期待できない状況下で、それでもどうにか展望を拓こうとするカンフル剤的な位置づけとしては、なかなか興味深く、クロイツブルク、エムシャー・パークのような成果をフルスト・プックラーラント、ザクセン・アンハルトそして、この最新のハンブルクが実現できるかどうか難しいところもあるが、上記の3つの中ではハンブルクが最もその効果が期待できるのではないかと思われる。IBAザクセン・アンハルトでは、ちょっとやけくそ感を覚えないでもないのだが、このハンブルクはもっと「やれば出来る」といった希望を感じる。やはり、その背景にはハンブルクという都市のポテンシャル、そして大学を始めとした圧倒的な知の集結を感じるからである。そして、IBAの大きな資源は、世界中とネットワーク化を図ることで、そのネットワークから学んでいくという、学習過程をシステムに内包化している点である。私が、IBAに興味を抱くのも、この学習過程のシステムに接することで自分も賢くなりたいと思っているからであろう。まあ、あと3年間はハンブルクからは目が離せそうもない。

タグ:ハンブルグ
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