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デビッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』 [ロック音楽]

これまで数多くのロック・アルバムが出されてきたが、このアルバムほど時代を超越して聴く者に訴えかけてくるものも少ないだろう。1曲目のファイブ・イヤースは、どこか気怠い感じを帯びつつもこれからのドラマの予感に大きく期待を膨らませ、人々をボウイの世界にぐいぐいと引き込んでいく力を持っている不思議な曲だ。そして2曲目のソウル・ラブへとバトンを渡す。これはロック史上最高レベルに達している名曲だと思う。ボウイという天才が生まれたことに感謝さえ覚える。さて、これだけの名曲の後に何の曲を持ってくるのかというのは難しいことだと思うが、ボウイはムーンエイジ・デイドリームで、ソウル・ラブで与えた感動と緊張感と期待のレベルをまったく落とさないどころか、むしろ加速化させる。ボウイ・ワールドは脳内でむしろ拡大されていく。そして4曲目はスターマン。もう涙が出てくるほど感動する。今聴くとやたら陳腐なエレキ・ギターのソロにも素直に感動させられる。さすがにスターマンの次の曲はちょっと一息が入る感じになる。それまで全力で800メートルを走破させられたような気分なので、こちらもリラックスして、イット・エイント・イージーを聴く。しかし、この曲も本当は安心して聴いてはいられないのだ。というのは、意識下にびしびしとボウイ効果が与えられているからだ。それは6曲目のレディー・スターダストでより顕著になってきて、なんかこう正常ではない状態にゆっくりとさせられてくる。そして7曲目のスター。なんだこの格好いいロックン・ロールの曲は。ボウイがエルトン・ジョンなんか遙かに霞むような素晴らしいメロディ・メーカーであることを改めて確認させられる。そして、そのノリノリにさせられた気分は8曲目のハング・オン・トゥ・ユアセルフに引き継がれる。当時、ボウイのこのライブを観たティーネイジャーの女の子が失神するのは分かる気がする。はっきりいって危険だ。よい子は近づかない方がいいであろう。ロックン・ロールの曲が2つ続いて、このアルバムのクライマックスともいえるジギー・スターダスト。改めて凄まじいアルバムであると思う。野球でいえば2番、4番、9番にバリー・ボンズが出てくるようなものである。しかも1番とか7番とか8番とかにはイチローが出てきている。10曲目はまたロックン・ロールのサフラジェット・シティ。コンサートでいえばアンコール的な位置づけであろう。そして、この凄まじいアルバムを締めるのは、静かなバラード調でありながら、その叫びに心が乱されるような気分にさせられるロックン・ロール・スーアサイドである。このアルバムを聴いた後は興奮がしばらく収まらない。このアルバムの傑出しているところは、単体で聴いても素晴らしい曲が、このアルバムを通じて聴くことでさらに輝きを増すということにある。コンセプト・アルバムとして極めて優れており、そこには一寸の隙もない。まさにボウイ世界を存分に堪能することができる。

本アルバムはデビッド・ボウイが不世出の天才であることを強烈に知らしめるロック史上の大傑作であると思う。これに匹敵するロック・アルバムはボウイのものを含めて10枚もないと思われる。必聴である。

ジギー・スターダスト

ジギー・スターダスト

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/09/29
  • メディア: CD



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