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『ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか』 [書評]

佐野敬彦著の『ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか』を読む。ヨーロッパと書かれているが、著者が住んでいたイタリアとフランスが中心である。ドイツの都市がなぜ美しいのかはこの著からは分かりづらい。しかし、逆に著者がよく知っている国の都市をベースに分析されているので、その意見は説得力がある。さすが芸大で教鞭を執られているだけのことはある。その見識は高く、都市をみる目が本を読むだけで鍛えられる印象を受ける。著者は、コルビジェなどのモダニズムをどうもあまり好ましくないと思っているらしく、婉曲に批判している。代わりにアール・ヌーボーなどの装飾的な意匠が好みらしい。これは、個人的には共感できる。特にフランスの都市をめぐり、旧市街地や村落の美しさに比して、郊外のモダニズムの影響を強く反映させた住宅団地の醜さを目の当たりにした後は尚更である。著者はデザイナーであることもあり、ヨーロッパの都市の美しさを、どっかの著書のように精神性とか民主主義の歴史などといったところに依拠しないのが何より有り難い。都市論は、建築家や都市計画家、環境デザイナーの人々の方が遙かに社会学や経済の先生、そして特にマーケッターなどより本質を理解しているのではと最近、この手の本を数多読んで思っているのであるが、その意見をさらに強化させてくれた良書である。

ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか

ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか

  • 作者: 佐野 敬彦
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 単行本



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