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リヨンを訪れ、その都市の魅力に圧倒される [都市デザイン]

リヨンを初めて訪れる。リヨンはフランスの第二の都市である。とはいえ、マルセイユもフランスの第二の都市と言っている。リヨンの都市人口は47万人、大都市圏は165万人。マルセイユのそれは83万人と135万人。つまり、自治体でみればマルセイユの方が大きいが、大都市圏でみればリヨンの方が大きいということか。

それはともかく、このリヨン。それほど期待せずに訪れたのだが、驚くほど素晴らしい都市であり、その魅力に圧倒された。バルセロナからガウディを取り除いたら、リヨンほど魅力的ではなくなるのではとも思わされた。ローヌ川とソーヌ川という二つの川と、二つの丘によって彩られるランドスケープは美しい。川を抱く大都市のランドスケープとしては、プラハやドレスデンほどではないかもしれないが、ブダペスト並みの美しさである。そして、何よりもこの都市に魅力を与えているのは、ローヌ川の西の地区に残る旧市街地のルネッサン様式の建物から構成される街並みである。この旧市街地は、1960年ぐらいまで放棄されたに等しかったが、マルロー法によって保全の道が開かれ、1998年には世界遺産に指定された。高い階上高を持つ建物がつくりだすファサード、石畳、そしてトラブールと呼ばれる建物を結ぶ迷路のような通路が、タイムスリップをしたような感覚を覚えさせる。この都市は、フランスよりイタリアを彷彿させる。それは、この都市はローマ時代の重要な拠点となっていただけでなく、ルネッサンス期後期に多くのイタリア人が移住したことにも因る。すなわち、この都市のベースは極めてイタリア的であり、それにフランス文化が上積みされている。ストラスブールやコルマールがドイツ的であるのと同様に、リヨンはイタリア的なのである。そして、ストラスブールやコルマールがドイツの都市に似てはいても異なるように、リヨンもイタリアの都市とも異なる。そのユニークさが、これらの都市の魅力を高めているのではないかと思う。

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(フルヴィエールの丘から市街地を展望する。手前はローヌ川。絶景)

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(フルヴィエール大聖堂)

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(フルヴィエール大聖堂のスケッチ)

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(旧市街地)

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(旧市街地)

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(旧市街地のトラブール)

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(旧市街地のトラブール)

このルネッサンス様式の街並みだけでなく、ローマ時代につくられた古代ローマ劇場の遺跡が旧市街地周辺には存在する。この遺産がリヨンという都市の歴史の古さを物語る。旧市街地だけでなく、ローヌ川の東の地区にあたる新市街地、新市街地の北側の丘陵付近に展開するクロワ・ルース地区もまた味がある。クロワ・ルース地区から展望するリヨンの市街地は絶景である。新市街地では個人的にはテロー広場が好みである。市庁舎そしてリヨン美術館に面しているこの広場は、自由の女神をつくったバルトルディ作の噴水がある。夜のライティングも絶妙であり、ただ巨大なベルクール広場より、遙かにリヨンのシンボルとして機能しているのではないかと察する。また、この広場のすぐ近くにジャン・ヌーヴェルが設計し、1993年に開演したオペラ座があるが、この建物も新市街地の歴史建築物と調和しつつ、その個性を発揮していて興味深い。

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(ローマ時代の遺跡であるローマ劇場)

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(クロワ・ルース地区から市街地を展望する)

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(素晴らしいテロー広場)

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(ジャン・ヌーヴェル設計のオペラ座)

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(新しいオペラ座はどうも若者には人気のよう)

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(ライティングで著名なリヨン。共和党広場)

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(共和党広場そばのプランタンのライティング)

しかし、このようなリヨンの素晴らしい都市資産も破壊される危機に直面したことがあった。この素晴らしい旧市街地を縦断する道路の計画が1960年代前半に策定されたのである。しかし、1962年にマルロー法が制定されたことで、この法律によって旧市街地保全運動が力を発揮し、この道路の計画を中断させることに成功する。フランスは都市に学ぶことはあっても、都市政策に学ぶことはあまりないと捉えている私ではあるが、マルロー法だけは別であることを改めて知る。このマルロー法によって、幾つもの貴重な文化資源がフランスにおいては保全されることに成功するのである。そして、その結果、フランスという国の魅力、さらにいえば文化という国力を保全することに成功する。この点は、鞆の浦とか下北沢などの文化資源を道路で破壊しようと考えている輩が多い日本が、大いに学ぶべきことなのではないかと思う。都市計画的に秀でているドイツ人だけでなく、その点がセラ・ヴィなフランス人でも出来ることなのである。日本人に出来ない筈はないと、リヨンに感動を覚えつつ思った次第である。

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