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レディ・ガガはポップ・スターの超エリートだ [ロック音楽]

ポップ・カルチャーはこれまで恐ろしいほど大量に生産され、大量に消費されてきた。もう進化する余地もさほどなく、これまでつくられてきたものを再加工し、包装を変えて商品化することぐらいしかないだろうと考えている。新しいものが種切れに近ければ、編集能力が求められる訳だが、そういう意味ではレディ・ガガは21世紀初頭に時代が送り出した優れた表現力を有した編集者であろう。結構、ここまで年をとるとそれほど驚かなくなっているのだが、それでもレディ・ガガの多くのインプットを自分のフィルターにかけて編集し、再加工する才能とそのポップ・アーティストの表現力には驚く。アメリカという社会の底力さえ感じさせるタレントであると思う。

イタリア系アメリカ人の企業家の娘として生まれ、マンハッタンであのヒルトン姉妹も通ったという私立学校に通い、ニューヨーク州立大学の芸術学部に早期入学を果たすという才媛である一方で、14歳からナイトクラブでパフォーマンスをし、クラブに通いまくり、その感性を磨き、さらには親から自立するためにストリップクラブで働くという、ある意味でパフォーマーとしての実地研修をしてきた彼女のこれまでの歩みを振り返ると、まさにポップ・スターとしての虎の穴を歩んできたような凄みを感じる。23歳にしてここまでの成功を収めたことがフロックではなく、当然の帰結なのではないかとさえ思わせる。

下記のフランスでの番組の取材をみると、それを確信させる。
http://www.wat.tv/video/lady-gaga-nouvelle-icone-2009-1led6_1g1e1_.html

しかも、母親の影響というかイタリアの血か、ファッション・センスがいい。そのプロボカティブなキャラクターからか、クリスティナ・アギレラと比較されることが多いそうだが、幾つかの違いを感じる。まず、レディ・ガガのボーカルは一流のレベルにあり、同じイタリア系のマドンナなどと比べても遙かに上手いが、それでも神域に近いクリスティナ・アギレラと同じレベルではない。そして、育ちの良さがどうしても出てしまい、それは結構、おやじである私には好感を与えるが、ビッチとなるための研修をしたレディ・ガガと真性のビッチのクリスティナ・アギレラとは違う質を感じてしまう。ストリッパーをしていても、バイセクシャルであっても、クリスティナ・アギレラと違ってどこか安心感がある。そういう意味では、大衆には受け入れられやすいかもしれない。ポップ・スターの超エリートであることは確かだし、その才能は天才レベルであるかもしれないが、狂気はそれほど宿っていない。そこがクリスティナ・アギレラとは違うところだと思うし、それゆえに相当長く、この業界に君臨するのではないかと思われる。少なくとも作曲能力は突出したものがあるし、ピアノの演奏能力も優れている。まあ、歌手やパフォーマーの前に音楽家なのだ。ビートルズでいえば、レディ・ガガはポール・マッカートニーなのである。彼女はジョン・レノンを英雄と称し、彼に由来する入れ墨も掘っているそうだが、そういう点も若きポール・マッカートニーを彷彿させる。

音楽はデビッド・ボウイやクイーンの影響を受けていると指摘されているが、個人的にはユーリズミックスを彷彿させる。そしてルックスは、1980年代に活躍したミッシング・パーソンズのデール・ボジオを彷彿させる。しかし、ボーカルはデールとは比較にならないほどレディ・ガガの方がうまいし、ファッション・センスも遙かに優れている。まあ、ポップ・スターをどうやってつくるのか、という虎の巻があれば、まさにレディ・ガガの生き方こそその典型なのではないかと思わされる。それを自分で戦略的にやったのか、勝手に本能的にやったのかは不明だが、どちらにしろ驚くべきことである。そして、家が金持ちであるという点も彼女の場合、大いにプラスに働いたと思われる。あの消費主義的な華やかさや艶やかさは、金に囲まれて育ったからこそ身についたものだと思われるからだ。そういった意味でも、極めてアメリカ的でありニューヨーク的でもある。ニューヨークという文化孵化器がまた、世界に送り出したタレントである。

と賞賛しつつ、彼女の音楽は私の琴線には触れない。ただ、客観的にその凄さは理解することができる。

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