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新書発売を記念して、没原稿を何回かに分けてアップする(1) [道路整備事業の大罪]

新書が今月の6日に発売される。タイトルは『道路整備事業の大罪』という非常に挑戦的で、ある意味で下品なものになっている。個人的にはこのタイトルには強い抵抗があるが、このブログでもたびたび指摘してきたように、日本の道路整備事業は大きな問題を抱えている。それは「罪」であるとは、実は著者である私はあまり思っていないのだが、新書で指摘した事例等から読者が、こりゃ「罪」だと思うこともあるかな、と考え、このタイトルで販売することにした。これは、やはり本は読者に手にとってもらわなくてはならない、という出版社の考えに同調したこともある。その内容の是非はともかくとして、選挙前に自民党政権が何を我が国にもたらしたのか、ということを本書を読んで考えてもらいたいと思っている。特に、このブログを読んでいただいている奇特な方には、是非とも読んでもらえればと思っている。というのも、このブログが元ネタになっている記事も結構あったりするからだ。


道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y 220)

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y 220)

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2009/08/06
  • メディア: 新書



とはいえ、本書の内容がどのようなものか不明で買うのも何であろう。ということで、没になった原稿を何回かに分けてここで公表したいと思っている。没になった理由はおもに字数が多すぎたからである。これらを読んで、興味をもっていただければ是非とも購入してもらえればと思っている。私の意見に賛成する必要はないが、意見を持ってもらうきっかけづくりにさせてもらいたいと図々しくも考えているのである。

それでは、没原稿1号(「はじめに」の部分を泣く泣く字数オーバーでカットした部分)

二〇〇四年三月、私はアメリカのデンバーに出張に行き、宿泊先のホテルですることもなくテレビの議会番組を見ていた。当時のアメリカは、まだニューエコノミーという収穫逓増の法則を説いた考え方が影響力を持っていて、地価は右肩上がりに上昇していた。その後、この国を襲う金融不況などは微塵も想像できず、人々は好景気を楽しんでいた。
その番組で、アメリカ連邦政府の貿易担当の役人が政治家に答弁していた。日米貿易問題についての答弁で、さして関心も持たないで見ていたのだが、そこで思わず耳を疑うような発言をその彼は発した。
「日本は愚かにも、誰も通らない地方に道路を整備したりしているから、いつまで経ってもアメリカの後塵を拝しているのです」
確かに、日本の道路整備はムダが多いかもしれないが、アメリカ人に指摘されると無性に腹が立った。今ならば、アメリカは道路にムダ遣いはしなかったかもしれないが、サブプライム・ローンなどで金融バブルを膨張させ、その挙げ句に破裂させてしまい、その尻拭いに巨額の税金を投入しているんだから目くそ鼻くそを笑うの類だ、と相手にしなければいいだけだ。しかし、そのときは日本がバカにされて悔しいと思うと同時に、なぜアメリカ人にまでバカにされる道路整備を日本は続けているのか、という情けなさでいっぱいになった。私は、平均的な日本人に比べると愛国心に欠けていると思うが、このときばかりは心の底から愛国心が湧き出てくるのを抑えられなかった。
アメリカにここまで愚弄される道路政策を、なぜ日本は顧みることもなく邁進し続けるのか。そして、そのことで日本がアメリカなどからバカにされていることを道路政策推進論者は知っているのだろうか。
このテレビに出演していた役人だけではない。東洋文化研究者であるアレックス・カーも、その著書『Dogs and Demons:Tale from the Dark Side of Modern Japan』で、「(日本は)海を埋め立てするために山を削り、山々は破壊的(destructive)でムダ(useless)な道路のために穴だらけになっている」と述べている。

以上である。アメリカ人に馬鹿にされる日本の道路整備事業。民主党に政権が変わりそうであるという期待が日本株を外国投資家が買うトレンドを現在、つくりあげているという意味を我々は本当に考える必要がある。

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