SSブログ

『スラムドッグ・ミリオネア』は傑作だ [映画批評]

『スラムドッグ・ミリオネア』を観る。2008年度のアカデミー賞の監督賞、作品、作曲賞、脚本賞など8部門に渡る賞を受賞した作品である。まあ、これだけアカデミー賞の部門賞を受賞するというのは、それだけ他の映画作品に優れたものがなかったのかもしれないが、この映画は傑作である。映画が社会において重要な意味があることを、この作品は我々に知らしめる。インドにはウッタラプラデッシュ州とウェスト・ベンガル州に行ったことがある。仕事であるので、それほどインドの社会に触れた訳ではないが、盲目の子供の物乞い、手足のない物乞いなどと接し、その壮絶なる生き様の上っ面は知っていた。仕事の関係でスラムにも訪れたが、南米のスラムと比較すると、未来への希望がまったく感じられない沈殿したような空気に心を詰まらされたこともある。





『スラムドッグ・ミリオネア』が、そのような物乞いをしなくてはならない人達の人生を的確に表現しているかは不明だ。ただし、ある程度の真実も含んでいるだろう。そして、美しい映像で、この映画はインドのスラムで生き延びなくてはならない子供達の逞しさ、厳しさを表現している。特に、人権といった言葉がいかにインドにおいて不毛であるかがよく分かる。また、裏切りが社会の常のような印象をも与える。しかし、その中で警察が主人公を信じて、クイズ番組に戻せるところなどは感動させる。そして、何より主人公はまったくぶれない。その頑固さ、諦めの悪さが、奇跡を起こす。それは出来すぎのシナリオで、あまりにもハッピー・エンディングだし、最後にキス・シーンというハリウッド映画のあまりの定型さにも辟易するが、しかし、それでもこの映画が人々に訴える力は強烈だ。インドのスラムは南米に比べて未来への希望がまったく感じられないと書いたが、リオのスラムを舞台にした『シティ・オブ・ゴッド』に比べて、この『スラムドッグ・ミリオネア』は遙かに希望を与えてくれる。そのような希望は貧しいインドの人達には励ましになるのかもしれない。しかし、物乞いのために目を潰された子供はそのような映画も観られないだろうが。そもそも、スラムの子供達は映画を観る機会があるのだろうか。映画では、主人公は映画スターからサインをもらうために、肥だめに飛び込むシーンがあり、それは傑作シーンだが、そういう映画スターに憧れるような生活状況にあるのだろうか。ちょっと疑問である。
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0