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『テルマ・エンド・ルイーズ』を観る [映画批評]

リドリー・スコット監督の1991年の作品『テルマ・エンド・ルイーズ』を観る。スーザン・サランドンとジーナ・デービスが競演するロード・ムービーだ。ジーナ・デービス演じるテルマが、スーザン・サランドン演じるルイーズを次から次へとトラブルに巻き込んでいき、終いには警察に追い詰められ、グランドキャニオンで心中してしまうというストーリーである。こう書いてしまうと元も子もないが、この映画はなかなか魅力溢れる。それは、この映画は、普通のアメリカ人女性が、アメリカではいかに生きにくいかをうまく表現しているからだと思う。テルマは専業主婦で、旦那に管理されていて街から出ることもできない。その抑圧された生活は息が詰まる。ルイーズはカフェテリアで単調な仕事に従事しており、自分の息抜きもかねて、友人であるテルマに二泊程度の旅行に誘う。それがきっかけで抑圧されたテルマの人生を楽しみたいという欲望が爆発する。その爆発が、ルイーズをどんどんと苦境に追い込んでいくのだが、捕まる直前におそらくザイオン国立公園をドライブしたシーンの後の砂漠での朝焼けを二人で眺めるシーンで、ルイーズもまたテルマと同じようにアメリカという社会では「生きていけない」ことを悟る。そして、結果的に心中自殺する訳だが、その自殺するシーンに何か清涼感のようなものを感じてしまうのである。それは、自分たちを抑圧する社会に屈しない主人公達の潔さに共感するからかもしれない。映画を通じて、テルマの馬鹿らしさにいらいらさせられるが、テルマの人生を楽しもうとする気持ちを否定する気持ちにはまったくなれない。むしろ、テルマを応援したくなるような切ない気持ちにさせられる。人生を楽しもうとする人間を誰が馬鹿にできよう。たとえ、その結末が悲惨なものになってしまっても。これは桐野夏生の『アウト』を観た時にも感じたのと似たものである。自由に束縛もなく生きたいという気持ちは抑えることはできない。しかし、それらを抑えているのが旦那であるということは、人の旦那である身としては、後味はよくはない。


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