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ドルトムントの工場跡地の「都市の針治療」的計画に感心する [都市の鍼治療]

ドイツのドルトムントに初めて降り立つ。人口60万人ほどのルール工業地域の中核都市で、ここを本拠とするサッカーチームのボルシア・ドルトムントはドイツ随一の熱狂的なファンである、ということくらいしか前知識として知らないで訪れた。ここ数年、ドイツにはよく来る機会があったのだが、ドルトムントは生まれて初めてである。隣にあるボーフムには行ったことはあるので、ルール地方が初めてという訳ではないし、よくドルトムントの駅は通過していた。なんか、灰色のイメージが強い都市であったが、実際、駅で降り、友人でドルトムント工科大学の教員をしているフランク・ルーストが運転する自動車で周辺を走ったのだが、そこで得た印象は、灰色っぽいイメージであった。とはいえ住宅街、そして商店街などはしっかりとしており、豊かな都市であることは理解できた。ドルトムントの友人宅で一泊したのだが、友人の家も非常にしっかりとしていた。派手さはないが、ドイツらしい質実剛健さが感じられる都市である。とはいえ、ミュンヘンやフライブルグ、ハイデルベルグ、フライブルグのような華やかさ、色彩の豊かさは全く感じられない。灰色の空に、黄緑から黄色っぽい植物の色、そして煉瓦の色に壁の白からベージュのグラデーション、そして道路の濃い灰色、といった色が支配している印象を受ける。

これはボーフムでボーフム大学のウタ・ホーン教授からも聞いたことだが、ルール地方の都市は鉄道の路線を境として北の平らな地域が貧しく、南の丘陵地は豊かであるそうだ。ランドスケープの美しいところに豊かさが集まる、という傾向が如実に分かる。実際、南の丘陵地のランドスケープは美しく、ちょうど紅葉しかけていることもあり、なかなかのものである。

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このドルトムントで進行している大きなプロジェクトが、巨大な工場跡地に湖を中心とする公園をつくってしまうというものだ。これは、土壌汚染が激しいために、汚染された土壌を掘った後の穴に水を入れて湖にしてしまおう、というアイデアから出てきたコンセプトだそうだ。ドイツらしい賢さがうかがえる工場跡地の方法としては相当優れたものなのではないか、と思われる。フィニックス湖と名付けられた湖のウォーターフロントには住宅、そして商業施設が配置されるそうだ。工場跡地、土壌汚染といったマイナスのイメージをポジティブなものに転換させるのは大変である。敢えて売れる土地を大きく減らすことで、残った土地の価値を大きく向上させる。レルネル市長がいうところの、まさに「都市の針治療」的なプロジェクトである。現在、このプロジェクトの現場には、工場で使われたでかい倉庫などがまだ残っており、巨大な砂場のような光景であるが、10年後には、相当感じのよいミックスユースの都市型住宅地へと変貌しているのではないだろうか。ドルトムントのような、それほど知名度が高くないような都市においても、こういうしっかりとした都市開発が展開しているところがドイツの懐の深さである。大いに感心する。

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