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モスクワ空港で時間を潰す [地球探訪記]

モスクワ空港にトランジットで滞在している。ドイツのベルリンで開催されるシンポジウムにパネリストとして招待された。来るか、というので行く行く、と言ったら送られてきたのがアエロフロートのチケットであった。成田発モスクワ行きの便に乗り、モスクワでなんと5時間待った後、ベルリン行きの飛行機に乗る。ベルリンに着くのは23時30分である。

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モスクワに来るのは初めてであった。モスクワ空港に着陸する飛行機の窓から眺めたモスクワという都市は私に強烈なインパクを与えた。その真っ平らな平原に林立する長方形の巨大な建物群。工場からもくもくと出る煙。片道4車線はある道路。高く聳え立つタワー(確かモスクワ・タワーという名前だったと思う)。そして、アスペンと思しき木の森。メルヘンチックな戸建て住宅。それは、今まで見たこともないタイプの都市であった。ブラジリアのような計画都市であるが、はるかに巨大である。サンパウロの巨大さをブラジリアのような幾何学的な都市計画を実践することでつくりあげた都市といえばいいのだろうか。そこには20世紀の計画論を愚直に実践してきたプロセスがみてとれる。ちょっと震えるような感動を覚える。私は有機的なボトムアップのまちづくりを研究したりしているが、その根底には20世紀的なトップダウンの都市計画に対しての愛情があるのではないか、と自分自身を疑うような身震いするような感情をモスクワの都市をみたことで覚えたのである。まさか、モスクワでそんな風に思うとは意外であった。リオデジャネイロ、ニューヨークで覚えた感動に近い。とはいえ、実際、モスクワの街を足で歩くと違う印象を持つのであろうが。

モスクワの都市を歩く機会は今回の旅行ではまったく与えられていない訳であるが、モスクワ空港は随分と知ることができた。まず、この空港の驚くべきところは座るところが極端に少ないということである。そのために、階段に座っている人達が多い。廊下とかに絨毯を敷いたり、飛行機で配られる毛布を敷いたりして、廊下で横になって休んでいる人達もいる。まるで新宿駅西口のホームレスのようである。そして、恐ろしくスペースが狭い。こんなに国土は大きいのに、このモスクワ空港のスペースの狭さはなんなんだ。こんなところで5時間つぶすのは辛いな、せめて座りたい、と思ってうろうろしていると、建設工事中の通関で待っている人達がいることに気付いた。工事中なのだが、椅子が置かれている。しかも電源もあるので、コンピューターを充電できる。持ち物検査の機械が置かれていて机もあるので、ここで待ち、コンピューターも充電する。立ち入り禁止を示唆するような赤いテープが貼られているが、注意されるまでいようと無視して入る。結局、注意されないで済んだ。

空港内で気付いたことといえば、喫煙者がすこぶる多いということだ。アエロフロートは今でも喫煙が機内で許されているようだが、これだけ喫煙者が多いと禁煙にすることは難しいのかもしれない。あと、空港内の店ではユーロが使えたりしたが、レストランではクレジット・カードが使えないようであった。アメリカ人が怒っており、私にも怒りを共有してもらいたかったようで文句を言ってきたが、まあ、そうそう自分のルールは通用しない。しかし、まあまあ英語が通用するので基本的な用は足せる。とはいえ、初めて訪れたロシアは、空港であったがちょっと不思議な印象を与えた。チェコのプラハの中央駅なんかと似たような印象で、非効率、公共空間であるのに欠落する快適性などである。ここらへんは、社会主義が崩壊した後、徐々に改善されていくのであろうか。モスクワには機会があればまた是非とも訪れたいとの気持ちをもたせたが、この空港は決して好きになれなかった。何か社会主義は人の創意工夫を発揮させないシステムだったのではないか、ということを考察させるような空港である。


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