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『ポスト・モータリゼーション』は、今後の日本の都市を考えるうえで必読の書である [書評]

京都大学教授である北村隆一が編著した『ポスト・モータリゼーション(21世紀の都市と交通戦略)』を読む。都市構造、商業、物流、観光、高齢化、情報化、地球環境問題といった側面からモータリゼーションの限界、そして可能性を探っている。執筆者によって内容に差がありすぎるといった難はあるが、北村教授の視点は鋭く、たいへんためになる。まあ、ケチをつけるとしたら情報化と自動車の関係性については、本当かよ、と突っ込みたいところが何点かあり説得力には欠けるが、都市構造、商業といった点からモータリゼーションの限界を分析、整理しているところは他の本や論文に比べて出色の出来である。こんな本が2001年に出版されていたにも関わらず、私は知らなかった。恥ずべきである。とはいえ、この本、失礼ながらあまり売れてなさそうである。こんな良書(とはいえ、いくつかの章は読むに値しないものもあるが)が出ていても、さほど注目されないといった現状は問題であろう。いろいろと事情はあったのかもしれないが、この著著は北村教授だけの視点でまとめるとより優れたものになったと推察される。特に、「都市の魅力を高めるためには公共空間の質を高めることが何より重要である」といった見識には、まさにその通りである、と強く同意する。

この1ヶ月、豊洲、お台場、柏の葉といった最近、計画的につくられた場所を訪れたのだが、どれもがこの公共空間のデザインを蔑ろにしている。そのため、せっかく計画する機会が与えられたにも関わらず、非常につまらない空間になってしまっている。自動車を優先させて、公共空間をしっかりとデザインしなければ、いい都市ができる訳がない。このような当たり前のことが、この国では理解されていない。しかも、悪いことに、こういう事業に携わっている人の多くは私の知り合いであったりする。にっちもさっちもいかない、とはこのような状態のことを言うのであろうか。まあ、とりあえず、一人でも多くの人がこの本を手にとってもらうことが、少しでもこの国の都市空間を改善させるためには必要かもしれない(とはいえ、繰り返すがいくつかの章は的を外してはいる)。


ポスト・モータリゼーション―21世紀の都市と交通戦略

ポスト・モータリゼーション―21世紀の都市と交通戦略

  • 作者: 北村 隆一
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 単行本



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