SSブログ

徳島市 [都市デザイン]

生まれて初めて徳島に足を踏み入れる。徳島のイメージはあまりなかった。阿波踊りをするところぐらいのイメージしか持っていなかったというのが正直なところである。あと、私はなぜか徳島の「徳」という字が造形的にあまり好きではない。非常にいい意味を持った字であるのは分かっているのだが、どうにもその形が好きではないのである(おそらく正方形を横に3つ並べているところが気に入らないのであろう)。そして「島」という字もそれほど造形的に好きではない。それに比して、これは都市ではないが「愛媛」とか「鳴門」とかはいい。なんかイマジネーションを膨らせるような名前である。そういう点で、私にとって「徳島」はあまりいいイマジネーションを抱かせていなかった。だから、高松や高知、松山といった都市と同程度だろうと思っていた。そう思っていたので、訪れたら非常に風光明媚な美しいランドスケープを擁した都市であったので驚いた。都市のほぼ中心部にどんと眉山という山が鎮座するように存在し、その眉山を小さくしたような城山が中央駅の後ろに位置している。そして、これらを縫うようにして川が流れている。眉山に登れば、徳島市街を一望できる。この景観が素晴らしい。函館も函館山からの展望は素晴らしいが、徳島はなにしろ駅から近いというか、ほとんど中心市街地に隣接しており、アクセスが素晴らしい。そして、この眉山は、聖地であるかごとく、原生の状態のままで維持されているように思える。眉山から市街を眺めると、この都市が地形に従うように形成されていったことがうかがえる。山河と都市がほどよく共存しているかのように、その景観は訴えかける。眉山の麓は寺社町になっていて、これまた鎌倉のような趣がある。美しい都市であり、感銘を受ける。

しかし、そのような美しいランドスケープを背景にしつつも、本当に残念なのは、人工物の汚さである。箱に長方形の窓を規則的に並べただけのような、イマジネーションが欠けている小学校低学年の児童が描いたようなビル。周囲の景観から目立つ、すなわち調和から外れていることを意図したかのような色彩の看板、建物。そして、看板などの文字のデザインの悪さ。それらは本当に、この美しい都市の背景となるランドスケープを無視し、汚している。せっかくの都市の貴重な資源を台無しにしている。それは、素晴らしく美味しい魚がとれたにも関わらず、いきなりガスで焼き魚にしてしまうかのごとく乱暴な行為である。日本人は食材の可能性を探求し、美味しい料理をつくることにかけては、世界的にも最も優れているのではないかと考える私であるが、この美しい景観を活かした都市づくり、街づくりに関しては、第二次世界大戦以前はともかく、それ以降はまったく下手になってしまった。徳島のように、元が素晴らしいと、その稚拙さが目立ち、大変残念である。この都市は、世界的にも誇らしい都市になる可能性を有していると思われるからだ。


nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0