SSブログ

東京事変の大人 [ロック音楽]

東京事変の「大人」を聴いた。前作をはるかに上回る完成度に参った。このブログで以前、東京事変を評価しつつも、椎名林檎はソロとしてやっていった方が音楽性の高い作品を発表できるのではないか、と書いたりしていたのだが、今回の「大人」は歌詞はもちろんのこと、作曲も「スーパースター」と「透明人間」以外はすべて椎名林檎であり、「教育」でみられた妙な民主主義的側面は消え、妙に控え目だった椎名林檎が一歩も二歩も前面に出てきており「椎名林檎と東京事変」というスタンスになっている。そして、このスタンスが前作よりも遙かに優れたこの作品を生み出したのである。また前回のブログで椎名林檎の楽曲能力の高さは他のメンバーとは違いすぎている、というようなことを述べたのだが、このアルバムで唯二、亀田師匠の書いた「スーパースター」と「透明人間」は相当レベルが高く、他の作品と通して聴いても見劣りがしない。椎名林檎の作品の特徴は、クラシックの影響を強く受けた和音の複雑さとマイナーの多用であるのだが、亀田師匠の二曲はむしろ正当派的ロックのコード使いで、どちらかというと陰影を帯びているアルバムに明るさをもたらし、ほどよいバランスを生み出している。それにしても、二人のメンバーチェンジは、より椎名林檎を前面に押し出す効果となり、結果的に優れた作品をつくりだしたことになるのだが、「教育」の中のベストチューンであり、日本のロック史上でも希有の名作である「群青日和」の作曲者が去ったことは少し寂しい気もする。まあ、基本としては、椎名林檎はバンドという形態をとろうとしても、やはりフロントマンとして圧倒的な核とならないと結果的に作品性の高いものはつくれないことが、「大人」と「教育」の出来を比べると理解できる。そして、これはオアシスの「ドント・ビリーブ・ザ・トゥルース」をいくらノエルが大傑作であると言っても、駄作であることをも説明している(ノエルが日本語を読めないからこういうことが書ける)。天才は民主主義的に凡人と一緒に協働作業などできないのである。必要なのは、コラボレーターではなくてサポーターであり、そういう意味で天才はキャンディーズではないが(古すぎる)「普通の女の子」ならぬ「普通のバンドメンバー」にはなれないのである。天才は孤独なのだ。そして、「教育」に比べて、周囲のバンドメンバーから椎名林檎が「浮いてきた」今回の「大人」は、前作よりずっと素晴らしい作品として仕上がったのである。こういうことを書くとビートルズとかは違うじゃないかと言う人がいるかもしれないが、ビートルズはジョン・レノンとポール・マッカートニーという二人の天才が共存したからこそ奇跡的なバンドになったのである。そんなバンドは滅多にないからこそ、ビートルズは特別な存在なのである。しかし、もし仮に椎名林檎と化学反応をばしばしと起こしてはれるような相方が出てきたら、それは凄まじく凄いことが起きそうであるが、そのような人はまず間違いなく女性であろう。

大人(アダルト) (通常盤)

大人(アダルト) (通常盤)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: CD

nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0