「下流社会」は確かに面白いが、三浦氏のベストかというとそうではない [書評]
三浦展氏の「下流社会」が馬鹿売れである。下流社会を形成するであろう予備軍は、経済的な要因ではなく、「生きる」意欲が低いからであるという慧眼にハッとさせられる。日々、学生と接していると本当に、学生達の将来を左右するのは、経済的なバックグランドなどではなく、「生きる」意欲、社会的に「協働」できる意志であることだと感じる。それを言語化し、マクロな社会の流れを整理したうえで論理的に説明する三浦氏の思考力に感心する。しかし、この「下流社会」、確かに面白いが、決して三浦氏のベストかというとそうではない。個人的には「ファスト風土」のオリジナリティ、分析力の鋭さの方が優れていると思うのだが、まあベストであるから一番売れる訳ではないということは、音楽ではよくあることだが、本でもあるということか。フォーリナーズで一番売れたのはセカンドだが、個人的にはファーストの方が優れていると思うし、同様のことはフリートウッドマックの「噂」と「フリートウッドマック」にも言える(例えが古くてすいません)。「下流社会」で三浦さんの本をはじめて手に取った読者は、是非とも「ファスト風土化する日本」も読んで貰いたいものである。